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LEG2

8月10日(日)カオヤイ

狭く激しい岩石路の高原で
序盤の生き残りを掛けた戦い

ラリーは2日目を迎えた。この日用意されていたのはプラーチーンプリーからカオヤイ国立公園のナコーンラーチャシーマーに至る500kmの行程。スペシャルステージは177.85km、ロードセクションは322.56kmという内容だ。

残念ながら今大会はカンボジア国境に近いLEG4、LEG6のコースが、カンボジア国境沿いにあまりにも近く、安全性確保のためキャンセルされることとなってしまったが、残る6つのLEGのうち最も長い距離が与えられたのがこのLEG2だ。

そして昨日のマッディーな状況から打って変わり、この日、エントラントを待っていたのは岩だらけのロックセクション。スタート地点から最初の44kmまでは、キャッサバ農園の中を走るルートとなり、2コーションや3コーションの岩や溝が多く、起伏のある斜面が延々と続いて行く。

コースは狭く、凹凸は厳しく、スピードを出せばサスペンションへのダメージが大な所ばかり。路面から突き出た岩は鋭く、タイヤへの負担もかなり大きい。また、所々、ブッシュに隠れた岩や切り株などが点在し、少しでも油断すればこれら自然の罠の餌食になってしまう。

だが、慎重に走らねばならぬ低速区間ばかりだったわけではなく、PCストップ以降の後半戦ではハイスピードの区間も存在した。こうした状況で、どこでどうスピードを落とし、どこで全開にするのか…、1分1秒を争う競技の中で各チームの選手達は自らの気持ちと、アクセル開度と、そして安全性への管理に至極手こずったはずだ。

案の定、岩場の凹みに捕まった者、切り株に乗り上げて逆さまになってしまった者、道路脇に落ちてしまった者、そしてサスペンションやクルマを壊してしまった者が続出した。この日も約25%のマシンがSS不通過等の理由で10時間近いペナルティが課されることとなり、序盤戦から想像を絶する消耗戦が繰り広げられた。

そんな修羅場を3時間を切る好タイムで走り抜けたのがトップの12台。さらに、2時間36分38秒という異次元のタイムでデイリートップを飾ったのが ♯122 TOYOTA GAZOO RACING INDONESIA の トヨタ フォーチュナーだ。

Tubagus Adhi Moerinsyahdi(インドネシア)/ Jatuporn Burakitpachai(タイ)組は2023年に初出場ながら総合2位となった実力者だが、ピックアップ勢より小柄なフォーチュナーが、この狭い山岳地帯によくマッチしていたのだろう。素晴らしい走りで総合8位から3位まで躍進した。

アジア市場のピックアップやSUVは年を追うごとに大きくなり続けているが、こと山奥のカントリーロードに関して言えば、少々そのサイズを持てあましている。実際、この日は♯146 Showa Garage Racing のジムニーなど、非力なマシンが前走のピックアップを追い回すような場面も何度か見られた。このように狭く凹凸の激しい地形では「ラインが選べる」ことも大切な性能になるはずだ。

続く2番手時計は♯112 MITSUBISHI RALLIART の Chayapon Yotha(タイ)/ Peerapong Sombutwong(タイ)組の三菱トライトン。4年前に初参戦初優勝を飾ったチャヤポン選手の走りは外から見ていてもやはり、ソツなく安定している。

2.4リッターのディーゼルターボエンジンは、ライバル・トヨタ ハイラックスの2.8リッターに排気量では劣ってはいるものの、登り坂を加速するスピードに遜色はなく、むしろ軽さのある機敏な挙動が狭いルート内ではマッチして見える。近くで見ていると競技仕様に徹したシーケンシャルのマニュアルシフトが奏でる甲高い音と相まって、とてもレーシーな雰囲気に溢れている。

対するライバル・ハイラックス勢でトップを飾ったのはやはりこの人、♯113 TOYOTA GAZOO RACING THAILAND の Natthaphon Angritthanon(タイ)/ Thanyaphat Meenil(タイ)組だ。ナタポン選手の走りは近くで見ていても決してスピード感のあるものではない。派手さもない。だが、その安定感は凄まじく、完走を旨とするクロスカントリーラリーに完全に最適化されている。

チームのナビゲーション能力も素晴らしく「気が付くと」トップに居るようなその走りは今大会でも健在。狭い山岳地帯で重いハイラックスを駆り、トップから6分遅れの好タイムを叩き出すのはさすがとしか言いようがない。

ちなみに TOYOTA GAZOO RACING THAILAND のマシンはサスペンションこそ市販車両とは別モノといえる仕様だが、エンジンはコンピューターチューンがメイン。それも一般ユーザーが入手可能なECUチューニングとほぼ同じもので、このあたりの仕様に、トヨタが広く一般競技ユーザーを重視して参戦していることが見て取れる。

そして4位につけたのが♯105 Team MITSUBISHI RALLIART の 田口 勝彦(日本)/ 保井 隆宏(日本)組。昨年は総合5位と健闘したふたりだが、そこから上位を目指す際にネックとなっていたのがタイのクロスカントリーラリー特有の地形や風土といった現地状況への理解と経験差だ。日本のラリーとは常識そのものが違うため、今年は現地タイに遠征して主にナビゲーションの精度を上げるための訓練を行って来た。その成果あって、今年は例年より余裕のあるドライビングで安定した順位を重ねているように見える。

続く5、6、7位は全ていすゞ D-MAX。昨年2位の♯102 Suwat Limjirapinya(タイ)/ Prakob Chaothale(タイ)組を筆頭に ISUZU SUPHAN YOKOHAMA LIQUI MOLY RACING TEAMのマシンが3台続いている。いすゞ D-MAXも今となっては、どちらかというと小型軽量な部類に入るピックアップで、この山岳路の走りにマッチしていたことが予想される。

さあ、競技はいよいよ中盤戦へと向かって行く。序盤の2日間が想像以上に厳しく、かなりのマシンが傷付き、重整備を受けねばならない状態になってしまっているが、そんな中、マシンの痛みを感じ、労りながら可能な限り速く走り抜けてきたメンバーがまだ無傷で上位に名を連ねている。続くLEG3の結果をお待ちいただきたい。

(文/河村 大、写真/高橋 学)

Moto

1日で500kmの移動。その間に各々の身に起きる様々な出来事が命運を分ける

夜明け前、前日のLeg.1を終えて疲れた身体を休めていたリゾートホテルで、エントランスへ至る大きな門の手前に2日目のスタートとなる計測ポイントが設置された。この日は総移動距離が500kmを超えるため、自ずと出発も早い。最初にスタートを切るライダーは05:45で、その後30秒ごとに1台ずつ、40台のバイクと2台のサイドカーが出走する(Autoはその後、間を開けて出走)。

次のビバーク(滞在ホテル)への想定最速到着時間は16:00の設定なので、最低でも10時間以上走ることになる。その間にスペシャルステージがあり、前後に140~180kmの一般公道を移動するリエゾンステージが存在する。

例えば、一般的に日本で休日にツーリングを、と考えた場合、人によってその距離や目的は異なるが、これほどの距離をバイクで走り続けるのはなかなかのものではないだろうか。

競技と趣味を比較してもまったく意味は無いが、同じバイク乗りであれば、なんとなく1日の規模感やボリューム感はイメージ出来るだろう。

さておき、Leg.2で最初にスタートを切ったのは前日16番目に出走したHUSQVARNA「FE350」を駆る池町選手だった。初日でSS区間を最速で駆け抜け、ペナルティも無く、トラブルにも見舞われず完走した結果であり、早速その実力を露にすることとなった。

この日の気候としては、生身の身体に降り注ぐ強烈な陽射しは相変わらず、しかし時折水蒸気をたっぷり蓄えた分厚い雲が日光を遮り、豊かな緑に覆われた大地を撫でる風がなんと心地よいことか……と思える瞬間もある。

現地の人によれば例年より雨が少ないとのことだが、この日はしっかりと恵みの雨をもたらしてくれた。場所によって視界を遮るほどのスコールがあり、それによって足止めを食らったライダーもチラホラ。

約180kmのSS区間では、前日の一部ウォーターベッドや泥濘は見られず、岩盤の上の削られた細かい砂利や、油断するとハンドルを取られるようなパウダー状の砂が積もった路面のほか、いかにもタイらしい赤土の道が多かった模様。

やはり難しいのはコマ図の解読だったようで、SSスタートから10kmにも満たないエリアで迷走し、同じ道を繰り返すことで上昇する体温に体力が消耗し、後続する4輪に巻き込まれるより先に離脱を……と決断したライダーも少なくなかった。

「正直、舐めてました……」そう語るのは、バイク仲間2人で初参戦の若者だった。ホテルで会ったのは19:00をとっくに過ぎたディナータイム、つい先ほど戻ったと言う。

しかしその表情に戦意喪失の様子はなく、明日以降に向けてまた頑張ろうとする笑顔が印象的で、自分のバイクで海外を走るツーリズムの醍醐味と、競技としての過酷な側面を同時に味わっているのだと、2人の言葉からは感じられた。

全体的には、順位で言うところの上位半分前後は「競技をしている」ものの、それ以外はコマ図解読困難、迷走からの体力消耗、次の日以降も踏まえて安全最優先で早々にホテルへ移動、という流れだった。

しかしそうやって「エスケープ」することまたひとつの正解であり、それを選択できる、余地があるところがアジアンラリーの特徴のひとつだと言える。

そもそも、おおよそ国道とは思えない制限速度120km/hの大型道路を100km以上も競技マシンで移動するのはかなりの苦痛を伴うもので、かといって排気量に余裕のあるミドルクラスのオフロードバイクでは、どうしても抜け出せない難所が待ち構えていることは言わずもがな。

ひとまず、競技2日目で早々に「ふるい」にかけられた感のあるところだが、この先まだ何が起きるか分からない。終わってしまえばあっという間のラリーでも、期間中はとても長く感じるもの。明日のLeg.3以降には休息日もあり、身体もマシンもこの長丁場でコンディションを維持できるのか? それもまた大事な要素であることは間違い無い。

引き続き、日々のリザルトをじっくり見比べて、選手たちの動向に注目していただきたい。

(写真・文/田中善介)

なお、この日は2輪に大会スポンサーのWelPortから1位〜5位の選手にアワードが用意されていた。19時からオープンしたディナー会場で、SS上位の選手ひとりずつ壇上に呼ばれ、株式会社ウェルポートコーポレーションの飯島祐一さんから賞金のアワードを受け取り、嬉しそうに記念写真に収まっていた。

Provisional Result LEG2
Provisional Result LEG 1+2
Start List LEG 3

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